ITエンジニアと一口にいっても、求人票に示される年収レンジは職種によって異なります。2026年9月に企業公式求人117件を調査し、給与レンジを確認できた113件を比較したところ、求人ごとの下限・上限から算出した中点の中央値は、社内SE592.5万円、Web系・自社開発732.5万円、クラウド774.2万円、ITコンサル812.2万円、AIエンジニア850万円でした。
ただし、これは平均年収でも、実際の入社者年収でもありません。今回確認できた企業公式求人の提示年収レンジを集計した結果です。職種名だけで高低を決めず、仕事の内容や必要経験も合わせて読むための比較として活用してください。
ITエンジニア5職種の提示年収を比較
| 職種 | 採用求人 | 給与比較件数 | 下限中央値 | 上限中央値 | 中点中央値 | 上限1,000万円以上 |
| 社内SE | 20 | 20 | 477.0万円 | 715.0万円 | 592.5万円 | 15.0% |
| Web系・自社開発 | 20 | 20 | 600.0万円 | 970.0万円 | 732.5万円 | 50.0% |
| クラウド | 20 | 20 | 514.7万円 | 950.0万円 | 774.2万円 | 45.0% |
| ITコンサル | 20 | 20 | 600.0万円 | 1,100.0万円 | 812.2万円 | 60.0% |
| AIエンジニア | 37 | 33 | 600.0万円 | 1,200.0万円 | 850.0万円 | 69.7% |
今回調査した求人に限ると、AIエンジニアの中点中央値が850万円で5職種中もっとも高く、次いでITコンサル、クラウドでした。一方で、各職種には管理職、アーキテクト、複数等級を含む求人もあり、会社規模や勤務地、職位の構成も同じではありません。この表を「職種ごとの平均」や将来の受取額と捉えないことが前提です。
企業公式求人117件をどう調査したか
調査対象
企業の採用ページ、または企業が利用する公式ATSに掲載された、日本国内勤務を主対象とする正社員求人を対象にしました。社内SE、Web系・自社開発、クラウド、ITコンサル、AIエンジニアに分類でき、企業名・給与水準・求人URLを確認できるものを調査しています。
採用条件
新規調査の4職種は各20求人・20社です。AIエンジニアは既存のNo.25調査を読み取り専用で再利用し、37求人・36社を対象としました。合計の採用求人は117件です。
除外条件
年間の下限・上限を再現できない求人、上限が「応相談」などで不明な求人、採用時に正社員であることを確認できない求人などは給与比較から除外しました。AIでは37求人中33件で給与レンジを確認できたため、給与比較の合計は113件です。
年収の集計方法
各求人の下限と上限を年額にそろえ、中点を「(下限+上限)÷2」で算出しました。そのうえで職種ごとの下限・上限・中点の中央値を出しています。中央値は、数値を順番に並べたときの中央の値で、極端に高いまたは低い値の影響を平均より受けにくい指標です。
月給しかない求人は、賞与を勝手に加えず、年換算が明示されるか単純な12倍で再現できる場合だけ採用しました。中点も実際の入社年収ではなく、求人票のレンジを比較するための便宜的な値です。
この調査で分からないこと
実際のオファー額、入社後の昇給、賞与やストックオプションの受取額、選考通過率は分かりません。無作為抽出でもないため、日本のITエンジニア全体を代表する統計でもありません。
社内SEの提示年収
社内SEは20求人・20社を比較し、下限中央値477.0万円、上限中央値715.0万円、中点中央値592.5万円でした。上限が1,000万円以上の求人は3件、15.0%です。
求人票への明記を数えると、要件定義は20件中18件、上流工程も18件、クラウドは14件、マネジメントは7件でした。これは社内SE求人でこれらの言葉が記載されていた件数であり、未記載の求人で不要という意味ではありません。社内ITの企画、業務部門との調整、ベンダー管理まで含むかは求人ごとに確認しましょう。社内SEへの転職を詳しく検討する場合は、社内SEへの転職で確認したいことを参照してください。
Web系・自社開発エンジニアの提示年収
Web系・自社開発は20求人・20社で、下限中央値600.0万円、上限中央値970.0万円、中点中央値732.5万円でした。上限1,000万円以上は10件、50.0%です。
プロダクト開発の明記は20件すべて、要件定義と上流工程は各17件、クラウドは16件、AIは9件でした。ここでの対象は自社プロダクトやWebアプリケーションの開発を主とする求人で、SESの常駐主体の求人とは分けています。コードを書く範囲だけでなく、企画・設計・運用までどこに関わるかを求人票で比べると、自分の伸ばしたい開発経験と照合しやすくなります。Web系・自社開発への転職で確認したいこと、SESからの転職で確認したいことも候補になります。
クラウドエンジニアの提示年収
クラウドは20求人・20社で、下限中央値514.7万円、上限中央値950.0万円、中点中央値774.2万円でした。上限1,000万円以上の求人は9件、45.0%です。
クラウドと上流工程は各20件、要件定義は17件、顧客折衝は14件に明記がありました。対象にはクラウドアーキテクト、PL/PM、顧客向け基盤支援を含む求人もあります。したがって、この数値をインフラ運用だけの求人にそのまま当てはめることはできません。AWS、Azure、GCPのどれを扱うか、設計・構築・運用のどこまで担うかを確認したうえで、クラウドエンジニアの転職で確認したいことで必要経験を補ってください。
ITコンサルタントの提示年収
ITコンサルは20求人・20社で、下限中央値600.0万円、上限中央値1,100.0万円、中点中央値812.2万円でした。上限1,000万円以上は12件、60.0%です。
上流工程は20件、要件定義も20件、顧客折衝は19件、クラウドは16件、マネジメントは14件に記載がありました。複数の職位を1求人で募集する例や、管理職を含む例があるため、幅の広い年収レンジをどう読むかが重要です。顧客課題の整理、提案、要件定義にどの程度の実績が求められるかを個別に確認しましょう。SEからITコンサルへの転職も経験の整理に役立ちます。
AIエンジニアの提示年収
AIエンジニアは37求人・36社を調査し、給与レンジを確認できた33件を比較しました。下限中央値600.0万円、上限中央値1,200.0万円、中点中央値850.0万円で、上限1,000万円以上は23件、69.7%です。
今回の横断比較では、AIエンジニアに高度なAI・機械学習、クラウド、上流工程を含む求人があったことまでは確認できます。ただし、それが提示レンジの高さを生む原因だとはこの調査だけではいえません。職務内容、MLモデルの開発かMLOpsか、プロダクト実装まで担うかを分けて確認してください。37求人の詳細な分析は、AIエンジニア37求人の詳細に譲ります。
5職種で求められるスキルはどう違う?
以下は求人票に明記された要件・業務の件数です。記載がないことは、そのスキルが不要という意味ではありません。
| 職種 | 要件定義 | 上流工程 | 顧客折衝 | クラウド | マネジメント | AI | プロダクト開発 |
| 社内SE(20件) | 18 | 18 | 0 | 14 | 7 | 1 | 0 |
| Web系・自社開発(20件) | 17 | 17 | 3 | 16 | 3 | 9 | 20 |
| クラウド(20件) | 17 | 20 | 14 | 20 | 9 | 12 | 3 |
| ITコンサル(20件) | 20 | 20 | 19 | 16 | 14 | 10 | 0 |
| AIエンジニア(37件) | 11 | 20 | 16 | 23 | 10 | 37 | 16 |
今回調査した、比較的高い提示レンジを含むクラウド・ITコンサル・AIの求人では、クラウドや上流工程、または顧客折衝の明記が多く見られました。しかし、特定のスキルがあるから年収が高くなるという因果関係を示すデータではありません。自分の経験を職種名だけで切り分けず、求人票にある役割へ置き換えて考えるための表です。
上限1,000万円以上の求人はどの職種に多かった?
求人レンジの上限が1,000万円以上だった割合は、社内SE15.0%、Web系・自社開発50.0%、クラウド45.0%、ITコンサル60.0%、AIエンジニア69.7%でした。AIは給与比較できた33件を分母にしています。
これは「1,000万円をもらえる確率」ではありません。上限は経験、職位、等級、勤務地などの条件で変わり、求人内に複数等級が含まれる場合もあります。上限だけでなく、下限、必要経験、対象となる職位を並べて確認してください。
提示年収だけで転職先を選ばない方がいい理由
同じ年収レンジでも、仕事内容は大きく異なります。たとえば、技術実装を深める仕事なのか、顧客との調整や提案が中心なのか、マネジメントを担うのかで、日々積み上がる経験は変わります。
比較時は、開発を継続できるか、技術寄りかビジネス寄りか、顧客折衝・マネジメントの比重、求められる経験、次に選べるキャリアを一緒に見ましょう。提示額が魅力的でも、現時点の経験とかけ離れた役割なら、応募後に確認すべき事項が増えます。
現在の経験からどの職種を検討する?
開発経験をプロダクトの改善や機能開発で伸ばしたいなら、Web系・自社開発の求人を中心に見る方法があります。インフラ、AWS、Azure、GCPの設計・運用経験を活かしたい場合は、クラウドの求人で設計・構築・SREの範囲を確認するとよいでしょう。
要件定義、提案、顧客との調整を増やしたいならITコンサル、社内のIT企画や業務改善・運用に寄せたいなら社内SEが比較対象になります。機械学習やAI/MLの実装・運用経験を伸ばしたい場合はAIエンジニアの求人を見ます。どれが一番よいかではなく、今説明できる経験と、次に増やしたい経験が重なる職種を選ぶのが出発点です。
求人票で年収を見るときの注意点
年収欄では、下限と上限のどちらが自分の経験に対応するのかをまず確認します。固定残業代の含まれ方、賞与の扱い、ストックオプション、管理職区分、勤務地、必須経験、レンジ幅も重要です。
今回の調査は、年収レンジの比較が目的です。個別求人の賞与額、SOの価値、選考時の提示額まで数値化したものではありません。応募前には原文の給与欄と労働条件を読み、面接でも確認してください。
よくある質問
ITエンジニアで年収1,000万円は可能?
今回の給与比較113件には、上限が1,000万円以上の求人が含まれます。ただし上限額は求人の全応募者に提示される額ではなく、経験・職位などの条件によります。この調査から達成可能性や受給確率は判断できません。
今回もっとも高い提示年収だった職種は?
今回調査した求人では、AIエンジニアの中点中央値が850万円で、5職種中もっとも高い値でした。市場全体でAIエンジニアがもっとも高いという結論ではありません。
社内SEは年収が低い?
今回の社内SE20件の中点中央値は592.5万円でした。職種全体の評価ではなく、対象求人の集計です。IT企画、業務改善、管理職など、役割・勤務地・企業規模で提示レンジは異なります。
未経験でも高い年収の職種に転職できる?
この調査は求人票の提示レンジを集計したもので、未経験者の採用可能性やオファー額を検証していません。未経験可否と必要経験を個別求人で確認してください。
AIエンジニアはなぜ提示レンジが高い?
原因はこの調査から断定できません。今回の求人にはAI/ML、クラウド、上流工程などを含むものがありましたが、特定スキルと提示年収の因果を検証したわけではありません。
まとめ
企業公式求人117件を調査し、給与レンジを確認できた113件を比べると、中点中央値は社内SE592.5万円、Web系・自社開発732.5万円、クラウド774.2万円、ITコンサル812.2万円、AIエンジニア850万円でした。
数値はあくまで今回調査した求人の提示額です。職種名や上限だけで決めず、仕事内容、必要経験、自分の現在地を並べて、個別求人を読むことが大切です。

